鯉のうらみ恋
むかし、内助が淵という大きな池があり、その堤に独り者の内助という男が住んでいた。内助は池で鯉を飼い育て、商売にしていた。
ある日のこと、見たこともない美しい鯉を発見する。それは鱗の一つ一つに巴(ともえ)の紋が出来ている雌の鯉。
「巴、 巴や!」と内助が呼べば、鯉の巴も嬉しそうにすり寄ってきて、まるで恋人のよう。
やがて商売も繁盛し忙しくなった内助は嫁さんを貰い、いつしか鯉の巴の事も忘れてしまう。
ある夜のこと「こんばんわぁ」と、凄さただよう女がやってきて…。
おさん茂右衛門語り草
尺八の音、ひときわ厳しく───
浅黄小袖に縄うたれたおさんが浮かぶ。
天和三年九月二十二日、京は粟田口の刑場の露と消えたおさん。
かの西鶴宗匠が書き遺された五人女の中で、一番の淫婦・いたずら女と語り伝えられた私め。
けど、二年近くも、命がけで貫き通した道ならぬ恋。決して悔やみはしない。
このおさんの生き様を、どうぞお聞き下されてたも…。